税法における前払費用の取り扱いについて、原則と特例を詳しく説明します。
前払費用の原則的な扱い
前払費用とは、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支払った費用のうち、事業年度終了時点でまだ提供を受けていない役務に対応する部分を指します。
例えば、来年度分の保険料や家賃などがこれに該当します。
原則として、前払費用は支出時に資産として計上し、実際に役務を受けた時点で損金または必要経費として計上します。
この処理方法を「繰延経理」と呼びます。
短期前払費用の特例(損金・必要経費算入)
前払費用は通常、資産として計上した後、対応する役務の提供を受けた期に費用として計上することが原則ですが、実務上は厳密な期間対応が困難な場合もあります。
そのため、1年以内の短期前払費用については、厳密な期間対応を行わず、支払時点で損金や必要経費として計上することが認められています。
この特例は、企業会計上の重要性の原則に基づいて、税務上も許容されています。
前払費用の取り扱い
前払費用の種類 | 原則的な取り扱い | 特例(※1) |
---|---|---|
1年以内の前払費用 | 資産計上 | 支払時に損金・必要経費として計上 |
1年を超える前払費用 | 資産計上(※2) | - |
※1: 1年以内の前払費用は、毎年継続して損金または必要経費として計上する必要があります。
※2: 1年を超える前払費用は、1年以内の部分を含めて繰延経理を行う必要があります。
なお、借入金を預金や有価証券等で運用する場合、その借入金に係る支払利子などは、収益計上と対応させる必要があるため、短期前払費用の特例は適用されません。
(法人税基本通達2-2-14、所得税基本通達37-30の2)