企業会計原則注解・注1では、重要性の原則について次のように規定されています。
企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。
重要性の原則は、企業会計原則において一般原則ではなく、一般原則に対する注解として位置づけられていますが、会計実務全般に関わる包括的な原則として重要な意味を持っています。
重要性の原則の二面性
企業会計原則注解・注1においては、重要性が乏しい項目については簡便な処理が許容されるとされていますが、重要性の原則には二つの側面があります。
ひとつは、重要性が低いものについては簡便な処理を許容するという側面、もうひとつは、重要性が高いものについてはより詳細な処理を求める側面です。
この原則の背景には、詳細な処理を行うためのコストと、その処理から得られる利益(利害関係者にとって有用な情報)を比較し、コストが利益を上回る場合には簡便な処理を認め、逆に利益が大きい場合には詳細な処理を求めるという考え方があります。
したがって、厳密な処理を実施するコストが膨大であっても、利害関係者にとって有用性の高い情報を簡便な方法で提供することが認められる場合もあることに留意すべきです。
処理面と表示面における重要性の原則(適用例)
重要性の原則は、会計処理面と表示面の二つの側面において適用されます。企業会計原則注解・注1では、会計処理面と表示面での適用例を以下のように示しています。
会計処理面での重要性原則の適用例
- 消耗品、消耗工具、器具備品、その他の貯蔵品等について、重要性が乏しいものは、その購入時または払出時に費用として処理する方法が採用可能です。
- 前払費用、未収収益、未払費用および前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができます。
- 引当金のうち、重要性の乏しいものについては、計上しないことができます。
- たな卸資産の取得原価に含まれる引取費用、関税、買入事務費、移管費、保管費等の付随費用のうち、重要性の乏しいものについては、取得原価に算入しないことができます。
表示面での重要性原則の適用例
- 分割返済の定めのある長期の債権または債務のうち、期限が1年以内に到来するもので重要性が乏しいものについては、固定資産または固定負債として表示することができます。