商品の購入や販売の際、予期しない状況として返品、値引き、割戻しが発生することがあります。これらの取引は、商品や価格に対する調整を行うものです。適切な会計処理を行わないと、帳簿が不正確になり、企業の財務状況が正しく反映されません。
特に、分記法を用いる場合には、返品や値引き、割戻しに対する仕訳方法を正確に理解することが重要です。
この記事では、分記法に基づく返品、値引き、割戻しの会計処理について詳しく解説します。
関連三分法における返品・値引き・割戻しがあった場合の仕訳・会計処理
返品、値引き、割戻しの会計処理
返品、値引き、割戻しといった取引は、売買契約に基づいて発生する調整であり、適切な仕訳処理が求められます。会計処理においては、各取引の実態を反映した仕訳を行い、商品の移動や金額の変更を正確に記録する必要があります。
分記法による返品
返品とは、商品に欠陥があったり、注文と異なる商品が届いたりした場合などに、買い手が売り手に商品を返却することです。買い手側では「仕入返品」と呼び、売り手側では「売上返品」と呼びます。返品が発生した場合には、商品勘定や商品販売益勘定を取り消すための仕訳が必要です。
- 仕入返品の場合、返品した商品に対する買掛金が減額され、同時に商品が返却されるため、商品も減少させる必要があります。
- 売上返品の場合、売掛金が減少し、返品された商品に相当する原価部分が商品に加算されるとともに、商品販売益が減少します。
仕訳パターン
・仕入返品
掛で購入した商品のうち500円を返品した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 500 | 商品 | 500 |
・売上返品
掛で売り上げた商品のうち400円(原価250円)の返品を受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品 | 250 | 売掛金 | 400 |
商品販売益 | 150 ※1 |
※1 売上返品額400円から原価250円を引いた差額150円が商品販売益として減少します。
分記法による値引き
値引きとは、商品の破損や品質不良などの理由により、売上代金から控除される金額をいいます。
買い手側では「仕入値引」と呼び、売り手側では「売上値引」と呼びます。
値引きは取引金額そのものが減額されるため、売掛金や買掛金が減少します。このとき、商品や商品販売益の調整が必要となります。値引きは商品の移動を伴わず、金額の調整だけが行われます。
- 仕入値引の場合、値引き額が買掛金から差し引かれ、商品が値引き分だけ減少します。
- 売上値引の場合、値引き額が売掛金から差し引かれ、商品販売益が減少します。
仕訳パターン
・仕入値引
掛で購入した商品のうち100円の値引きを受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 100 | 商品 | 100 |
・売上値引
掛で売り上げた商品のうち100円の値引きをした。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品販売益 | 100 | 売掛金 | 100 |
分記法による割戻し
割戻しとは、一定期間に多額または多量の取引をした相手先に対して、代金の一部を減額することをいいます。商品をたくさん買ってくれたお礼に安くしてあげたというイメージです。
買い手側では「仕入割戻し」と呼び、売り手側では「売上割戻し」と呼びます。割戻しはリベートと呼ばれることもあります。割戻しは商品の移動を伴わず、金額の調整だけが行われます。
- 仕入割戻しの場合、割戻し額が買掛金から差し引かれ、商品が割戻し分だけ減少します。
- 売上割戻しの場合、割戻し額が売掛金から差し引かれ、商品販売益が減少します。
仕訳パターン
・仕入割戻し
掛で購入した商品のうち100円の割戻しを受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 100 | 商品 | 100 |
・売上割戻し
掛で売り上げた商品のうち100円の割戻しをした。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品販売益 | 100 | 売掛金 | 100 |
練習問題
問題1
次の取引の仕訳を示しなさい。なお、当社は分記法を採用している。
1.当社はA株式会社より商品10,000円を掛で仕入れた。
2.仕入れた商品のうち、2,000円を返品した。
3.仕入れた商品について1,000円の値引きを受けた。
4.仕入れた商品について500円の割戻しを受けた。
【解答・解説】
1.
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品 | 10,000 | 買掛金 | 10,000 |
2.
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 2,000 | 商品 | 2,000 |
3.
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 1,000 | 商品 | 1,000 |
4.
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 500 | 商品 | 500 |
問題1
次の取引の仕訳を示しなさい。なお、当社は分記法を採用している。
1.当社はA株式会社に商品10,000円(原価7,000)を掛で売り上げた。
2.売り上げた商品のうち、2,000円(原価1,400)が返品された。
3.売り上げた商品について1,000円の値引きをした。
4.売り上げた商品について500円の割戻しをした。
【解答・解説】
1.
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 10,000 | 商品 | 7,000 |
商品販売益 | 3,000 ※1 |
※1 10,000円-7,000円=3,000円
2.
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品 | 1,400 | 売掛金 | 2,000 |
商品販売益 | 600 |
※1 2,000円-1,400円=600円
3.
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品販売益 | 1,000 | 売掛金 | 1,000 |
4.
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品販売益 | 500 | 売掛金 | 500 |
まとめ
売り上げた商品に対して返品、値引き、割戻しがあった場合には、「商品販売益」勘定を減少させるとともに、「商品」勘定を増加させる必要があります。一方、仕入れた商品について返品、値引き、割戻しがあった場合には、「商品」勘定を減少させます。
返品は商品の返却を伴うため商品の移動がありますが、値引きや割戻しは金額の減額のみで、商品の移動はありません。