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簿記3級

【簿記】当期発生の売掛金などが貸し倒れた場合の仕訳・会計処理【貸倒損失の表示区分に注意】

貸倒れとは、売掛金や受取手形、貸付金などの債権が、得意先の倒産や経済的な困難により回収できなくなることを指します。

企業活動において、得意先からの支払いが滞ることはしばしば発生する問題ですが、これに対する適切な会計処理は経理担当者にとって重要な課題です。

この記事では、当期に発生した売掛金や貸付金などが貸し倒れた場合の仕訳について、詳しく解説します。

 

貸倒れのパターン

貸倒れには、主に以下の2つのパターンがあります。

  • 当期発生の売掛金や受取手形などの債権が、当期に貸し倒れた場合
  • 前期以前に発生した売掛金や受取手形などの債権が、貸し倒れた場合

今回は、「当期発生の売掛金や受取手形などの債権が、当期に貸し倒れた場合」に焦点をあてて解説します。

本記事では、当期発生の売掛金や受取手形が当期内に貸し倒れた場合に焦点を当てて解説します。このケースでは、貸倒引当金を設定していないことが前提となるため、貸倒損失を直接計上することになります。

 

貸倒損失の表示区分

貸倒損失は、次の2つの区分に分けて表示されます。

  • 「販売費及び一般管理費」(売掛金や受取手形など、通常の営業取引に関連する債権が貸し倒れた場合)
  • 「営業外費用」(貸付金など、通常の営業取引に関連しない債権が貸し倒れた場合)

この区分により、貸倒損失がどの勘定科目に計上されるかが決まります。

勘定科目(表示科目) 表示区分
貸倒損失 「販売費及び一般管理費」または「営業外費用」

 

当期発生の売掛金が貸し倒れた場合の会計処理

当期に発生した売掛金が貸し倒れた場合、貸倒引当金は設定されていないため、貸倒損失を直接計上します。売掛金などの営業に関連する貸倒損失は「販売費及び一般管理費」に計上されます。

 

<例題>

当期発生の売掛金100,000円が貸し倒れた。

借方 金額 貸方 金額
貸倒損失 100,000 売掛金 100,000

この仕訳により、売掛金10,000円が回収不能であることを帳簿上で処理し、同時にその金額を貸倒損失として計上します。売掛金に関する貸倒損失は、その期の販売費及び一般管理費として計上され、企業の経常利益を減少させます。

 

営業外費用として計上される貸倒損失

貸付金に関する貸倒損失は「営業外費用」として計上されます。営業外費用とは、営業活動以外で発生した費用であり、売上や営業活動に直接関連しない損失を指します。

貸付金に関する貸倒損失はその典型的な例で、営業活動とは無関係な事象によって生じます。そのため、貸倒損失を計上することで、企業の実態に即した適切な財務諸表が作成されることになります。

 

<例題>

当期発生の貸付金2,000,000円が貸し倒れた。

借方 金額 貸方 金額
貸倒損失 2,000,000 貸付金 2,000,000

この仕訳により、貸付金2,000,000円が回収不能であることを帳簿上で処理し、同時にその金額を貸倒損失として計上します。貸付金に関する貸倒損失はその期の営業外費用として計上され、企業の税引前当期純利益を減少させます。

 

当期発生と前期以前の売掛金が貸し倒れた場合

当期発生と前期以前の売掛金が貸し倒れた場合、企業は貸倒引当金をどのように処理するかが重要です。通常、企業は将来の貸倒れに備えて貸倒引当金を計上していますが、当期発生の売掛金が当期に貸し倒れた場合には、貸倒引当金は設定されていないことが多いです。

 

貸倒引当金とその処理方法

貸倒引当金とは、将来発生する可能性のある貸倒れに備え、事前に積み立てておく引当金です。貸倒引当金を設定している場合、実際に貸倒れが発生した際には、設定した引当金を使って仕訳を行います。

 

当期発生と前期以前の売掛金の処理

当期発生の売掛金と前期以前に発生した売掛金が共に貸し倒れた場合、貸倒引当金は前期発生の売掛金に充当されます。そして、当期発生の売掛金に対しては、貸倒損失を直接計上します。これにより、前期に設定された引当金が適切に活用され、当期の貸倒損失が確定します。

このような処理により、貸倒れに関連する費用が適切に計上され、財務諸表で貸倒引当金と貸倒損失が明確に区別されます。これによって、企業の財務状況がより正確に反映されます。

<例題>

当期発生の売掛金100,000円と前期発生の売掛金30,000円が貸し倒れた。なお、貸倒引当金の残高は50,000円である。なお、前期発生の売掛金に対して50,000円の貸倒引当金を設定している。

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金 30,000 売掛金 130,000 ※1
貸倒損失 100,000

※1 100,000円+30,000円=130,000円

この仕訳では、貸倒引当金は前期発生の売掛金に対応し、貸倒損失は当期発生の売掛金に対応しています。

 

練習問題

得意先A社が倒産し、当期に発生した売掛金500,000円が貸し倒れた。

借方 金額 貸方 金額
貸倒損失 500,000 売掛金 500,000

得意先A社の倒産により、当期に発生した売掛金500,000円が回収不能となったため、貸倒損失として計上します。

 

まとめ

貸倒れが発生した場合、仕訳方法は発生した売掛金や受取手形、貸付金が営業活動に関連しているかどうかによって異なります。当期に発生した売掛金や受取手形が貸し倒れた場合、貸倒損失は「販売費及び一般管理費」として計上されます。一方、貸付金が貸し倒れた場合、その損失は「営業外費用」として計上されます。

また、貸倒引当金を設定している場合、前期発生の売掛金に対して設定した引当金を充当し、当期発生の売掛金に対しては直接貸倒損失を計上します。この処理により、貸倒引当金と貸倒損失が適切に区別され、企業の財務諸表が正確に反映されます。

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