小口現金制度とは、交通費や郵便料金などの日常的に発生する少額の支払いのために現金を用度係にあらかじめ渡しておき、用度係が現金による取引を行う方法をいいます。
定額資金前渡制度とは、一定期間(多くの場合1ヶ月)に必要な金額を事前に用度係に渡しておき、用度係から報告を受けた金額と同額の資金を補給する方法です。
資金の補給のタイミングは、一定期間の末日補給と初日補給があります。
貸借対照表の表示区分と表示科目
小口現金は貸借対照表(B/S)の「流動資産」に分類されます。
表示科目は「現金」または「現金及び預金」です。
小口現金は「現金」に含めて表示するので注意してください。
末日補給制と初日補給制の違い
末日補給制は、末日に支払報告を受けた後ただちに補給する方法です。
初日補給制は、末日に支払報告を受けた翌日に補給する方法です。
1ヶ月の定額資金前渡制度の場合、末日補給制は月末に補給をし、初日補給制は月初に補給します。
小口現金の一連の流れ
① 資金を前渡しした時
4月1日より定額資金前渡制度を採用することになり、用度係に小口現金として小切手100,000円を渡した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
小口現金 | 100,000 | 当座 | 100,000 |
② 小切手の換金時
用度係は小口現金として渡された小切手100,000を銀行で換金した。
仕訳不要 |
会計係が行なった行為のみが仕訳の対象となるので、用度係の行為は仕訳の対象となりません。
③ 諸経費の支払い時
用度係は通信費2,000円、旅費交通費4,000円、消耗品費6,000円、雑費1,000円を小口現金から支払った。
仕訳不要 |
用度係の行為なので仕訳の対象となりません。
④ 支払いの報告を受けた時
4月30日に用度係より下記の4月中の小口現金の支払い報告を受けた。
通信費10,000円、旅費交通費30,000円、消耗品費5,000円、雑費7,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
通信費 | 10,000 | 小口現金 | 52,000 |
旅費交通費 | 30,000 | ||
消耗品費 | 5,000 | ||
雑費 | 7,000 |
用度係から支払いの報告を受けた時に費用を計上し、小口現金勘定を減らします。
⑤ 小口現金の補給時
末日補給制
4月30日、支払報告書に基づいて、用度係へ52,000円の小切手を振り出して補給した。なお、当社は小口現金の補給について末日補給制を採用している。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
小口現金 | 52,000 | 当座 | 52,000 |
注意ポイント
末日補給制を採用しているので、4月30日に小口現金の補給の仕訳を行います。
初日補給制
5月1日、当社は支払報告書に基づいて、用度係へ52,000円の小切手を振り出して補給した。なお、当社は小口現金の補給について初日補給制を採用している。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
小口現金 | 52,000 | 当座 | 52,000 |
注意ポイント
初日補給制を採用しているので、5月1日に小口現金の補給の仕訳を行います。
まとめ
小口現金制度は、日常的に発生する少額の支払いを効率的に処理するための方法で、定額資金前渡制度を採用しています。小口現金は貸借対照表の「流動資産」として表示され、表示科目は「現金」または「現金及び預金」となります。仕訳は会計係が行った行為に基づいて記録され、用度係の支払い行為は仕訳の対象外となります。
資金補給のタイミングには、末日補給制と初日補給制の2つの方法があります。末日補給制では月末に補給し、初日補給制では月初に補給します。どちらの方式も、用度係に事前に渡された資金の支払い報告を受けて補給額を計上し、適切に補充します。
このように、小口現金の管理は、企業の経費処理を効率化し、適切な資金管理をサポートする重要な制度です。