貸付金は、企業や個人が日常的に行う金融取引の一つで、経理業務において欠かせない重要な要素です。企業が他の企業や個人に資金を貸し出すことで発生する債権であり、この処理は簿記や会計の基本となります。
仕訳や利息計算のスキルは、簿記3級の試験のみならず、実務においても頻繁に求められます。
この記事では、貸付金に関連する仕訳や勘定科目、利息の計算方法についてわかりやすく解説します。
貸付金とは
貸付金とは、取引先や関係会社、従業員などに金銭を貸し付けた場合に発生する金銭債権のことをいいます。この債権は、将来現金を受け取る権利として企業の資産として計上されます。
企業では、借用証書を取り交わして貸付を行うのが一般的です。簿記の問題で「現金を貸し付けた」と記載されていれば、貸付金勘定を使用します。また、手形を使って貸し付けた場合には「手形貸付金勘定」を使います。
参考:金銭債権とは、将来の一定期日に現金を受け取る契約上の権利のことで、受取手形、売掛金、貸付金などが該当します。
勘定科目
・貸付金は「資産」に分類され、さらに「短期貸付金」と「長期貸付金」に分けられます。簿記3級では、これらを一括して「貸付金」として処理します。
勘定科目(表示科目) | 表示区分 |
貸付金 | 資産 |
参考:返済期限が貸借対照日の翌日から起算して1年以内に到来するものは「短期貸付金」に該当し、1年を超えるものは「長期貸付金」に該当します。この区分により、財務諸表作成時に適切な資産計上が可能となります。
・受取利息は、貸付金に対して受け取る利息であり、貸付金に関連する収益として「営業外収益」に分類されます。
勘定科目(表示科目) | 表示区分 |
受取利息 | 営業外収益 |
貸付金の利息計算方法
貸付金に関連する利息は、借入金と逆の処理が求められます。借入金では利息を支払いますが、貸付金の場合は利息を受け取るため、貸付金の利息は「収益」として計上します。
簿記3級では利息額の計算が頻繁に出題されます。利息の計算は、日割計算で行う場合、次の式を使用します。
利息額 = 貸付金額 × 利率(年) ÷ 365 × 貸付期間(日)
例えば、貸付金額1,000,000円、年利率5%、貸付期間300日であれば、利息は次のように計算されます。(円未満は四捨五入)
1,000,000円 × 5% ÷ 365 × 300日 = 41,096円
仕訳パターン
貸付金に関連する仕訳は実務で頻繁に発生します。以下では、貸付金の発生から返済、利息の受け取りまでの代表的な仕訳パターンを紹介します。
お金を貸したとき
<例題>
取引先に現金500,000円を貸し付けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸付金 | 500,000 | 現金 | 500,000 |
この仕訳は、現金が減少し、貸付金という資産が増加したことを示しています。貸付金の利息は、貸付期間が始まった時点ではまだ発生しないため、この時点では利息に関する仕訳は不要です。
利息を受け取ったとき
<例題>
取引先から貸付金の利息12,500円を現金で受け取った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 12,500 | 受取利息 ※1 | 12,500 |
※1 受取利息は「収益」なので、増加した場合は貸方に計上します。
貸付金の返済を受けたとき
<例題>
取引先に貸し付けていた500,000円について、現金で返済を受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 500,000 | 貸付金 | 500,000 |
貸付金の返済を利息とともに受けた場合
<例題>
取引先から貸付金500,000円と利息12,500円を現金で受け取った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 512,500 | 受取利息 | 12,500 |
貸付金 | 500,000 |
この仕訳は、下記の①と②を合算したものです。
① 利息部分
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 12,500 | 受取利息 | 12,500 |
② 元本部分
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 500,000 | 貸付金 | 500,000 |
③ ①+②
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 512,500 | 受取利息 | 12,500 |
貸付金 | 500,000 |
練習問題
仕訳の理解を深めるために、以下の練習問題を解いてみましょう。
問題1
当社はA社に現金300,000円を貸し付けた。
【解答・解説】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸付金 | 300,000 | 現金 | 300,000 |
問題2
A社から貸付金の利息5,000円を現金で受け取った。
【解答・解説】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 5,000 | 受取利息 | 5,000 |
問題3
A社に貸し付けていた300,000円について、現金で返済を受けた。
【解答・解説】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 300,000 | 貸付金 | 300,000 |
問題4
A社は、取引先Bに対して現金1,000,000円を年利率5%、貸付期間300日で貸し付けた。貸付金の返済は、元本と利息が一緒に支払われる契約である。貸付金の返済時(元本と利息の受け取り)の仕訳を行いなさい。(円未満は四捨五入)
【解答・解説】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 1,041,096 ※2 | 受取利息 | 41,096 ※1 |
貸付金 | 1,000,000 |
※1 1,000,000円×5%÷365×300日=41,096円
※2 元本1,000,000円+利息41,096円=1,041,096円
まとめ
貸付金は、企業や個人が他の企業や個人に金銭を貸し付ける際に発生する金銭債権です。簿記3級の試験でも重要な項目となっています。
貸付金の利息を日割計算で求める場合、計算式は「貸付金額×利率(年)÷365×貸付期間(日)」です。仕訳や計算方法を正確に理解することは、試験対策や実務で非常に重要です。
特に、貸付金に関連する仕訳を正確に行うことが、経理業務を円滑に進めるための基本です。これらの知識をしっかり身につけ、簿記3級合格を目指しましょう。