企業の資金繰りが厳しいとき、手形の割引は非常に有効な手段となります。通常、手形は支払期日まで現金化することができませんが、割引を通じて、期日前に銀行から現金を受け取ることが可能になります。手形を割引すると割引料が発生するため会計処理が必要です。
本記事では、手形の割引に関する基本的な仕訳や割引料の計算方法をわかりやすく解説します。
手形の割引とは?
通常、手形は支払期日が到来するまで現金に換えることはできません。つまり、企業が手形を受け取った場合、現金化するには期日まで待つ必要があります。
しかし、資金繰りが厳しくなった場合や急いで現金が必要な場合、企業は手形を銀行に持ち込んで買い取ってもらうことができます。これを「手形の割引」と呼びます。
手形を割引すると、企業は手形の額面金額よりも少ない金額を受け取ることになります。理由は、銀行が手形を早期に現金化するため、リスクや利息を考慮して割引料を差し引いて支払うからです。この割引料は、手形の支払期日までの期間に応じて利息として計算され、その差額は「手形売却損」として会計処理されます。
手形を受け取った場合、企業には次の3つの選択肢があります。
- 手形を保管し、支払期日まで待って換金する。
- 手形を裏書譲渡する。
- 手形を銀行で割引く。
割引料が発生する理由
手形の割引料は、基本的に手形の支払期日よりも前に現金を受け取ることに対する「利息」にあたります。銀行は、期日前に手形を換金する際、予めその利息分を差し引いて支払うため、その差額が割引料として発生します。
これは、貸し出しと同様に、銀行が現金を手にするための対価であり、企業はその代償として割引料を支払うことになります。
簡単に言うと、銀行は「すぐにお金が欲しい」という企業にお金を早く渡す代わりに、そのサービスに対する手数料として割引料を取るのです。この割引料は、銀行が企業にお金を貸す時にかかる利息のようなもので、企業はその利息分を支払うことになります。
銀行は、期日よりも早くお金を渡すことで現金を手に入れますが、その見返りとして、企業はその利息分を割引料として支払わなければならないのです。
割引料は「利息相当額」として計算され、手形の額面金額に利率と割引日数を掛け合わせて算出されます。この割引料が大きければ、企業が実際に受け取る現金は少なくなります。
割引料の計算方法
割引料の計算方法は以下の式を用います。
割引料(手形売却損)= 額面金額 × 年利 × 割引日数 ÷ 365日
この計算式に従って、手形の額面金額、年利率、および割引日数(支払期日までの日数)を使って割引料を算出します。
例えば、手形の額面金額が100,000円、年利が5%、割引日数が30日であれば、割引料は次のように計算できます。
割引料= 100,000円 × 5% × 30日 ÷ 365日 = 410円
このように、割引料は手形を割引く期間に基づいて計算され、銀行が手形を早期に現金化するために徴収する費用となります。
仕訳パターン
手形を割引した際の基本的な仕訳は以下のようになります。
・手形の割引時
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
当座預金 | xxx | 受取手形 | xxx |
手形売却損 | xxx |
- 借方
当座預金(割引後に受け取る金額) - 貸方
受取手形(手形の額面金額)
手形売却損(割引料)
この仕訳により、手形を割引いた結果として、受け取った金額が当座預金に計上され、手形売却損(割引料)は営業外費用として計上されます。
練習問題
次の取引の仕訳を示しなさい。
企業が100,000円の手形を銀行で割引き、割引料として2,000円が差し引かれた残額98,000円を当座預金に預け入れた。
【解答・解説】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
当座預金 | 98,000 | 受取手形 | 100,000 |
手形売却損 | 2,000 |
この仕訳では、割引後に当座預金口座に預け入れた金額98,000円と、手形の額面金額(100,000円)、差し引かれた割引料(手形売却損)2,000円を記入しています。割引料(手形売却損)は営業外費用として計上され、企業の会計上では費用として扱われます。
まとめ
手形の割引は、企業が資金繰りを確保するために有効な方法ですが、その際に割引料(手形売却損)が発生することを理解しておくことが重要です。手形を銀行で割引くことで、企業は支払期日より早く現金を手に入れることができますが、その代わりに割引料を支払うことになります。
この割引料は、銀行が期日前に手形を換金するためのリスクと利息に相当する費用であり、会計上は営業外費用として処理されます。割引料は、手形の額面金額、年利、割引日数を基に計算され、企業が実際に受け取る現金は割引料を差し引いた額となります。
企業はこの仕訳や会計処理をしっかりと行い、資金繰りの管理を行うことが求められます。