工業簿記を学んでいると、「経費」という言葉がよく出てきますが、この「経費」の意味を初心者の方が理解するのは少し難しいかもしれません。商業簿記でも「経費」という言葉は使われますが、工業簿記での「経費」には少し違いがあります。
この違いを理解することが、工業簿記における経費を正しく理解するための第一歩です。
この記事では、工業簿記における「経費」の意味を簡単に説明し、実際の仕訳例を通して、経費の処理方法をわかりやすく解説します。
経費とは?
工業簿記における「経費」は、製品を作るために直接かかる「材料費」や「労務費」(労働者への賃金)以外のコストを指します。例えば、工場の電気代や工場内の機械や設備の減価償却費などがこれにあたります。
具体的には、材料費や労務費は製品を作るために直接必要なコストですが、経費は製造を支えるためにかかるコストです。
簡単に言えば、経費は製品の生産に欠かせない設備や環境を維持するための費用であり、製品そのものを作るための直接的なコストとは異なります。
たとえば、工場で使う電気代や設備の減価償却費は、製造を支える環境のコストと考えることができます。このような費用を「経費」として記録します。
仕訳例
ここでは、「経費」を支払った場合と消費した場合の仕訳例を解説します。
1.経費を支払ったとき
<例題>
今月分の経費として500,000円を現金で支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
経費 | 500,000 | 現金 | 500,000 |
この場合、経費を現金で支払ったので、「経費」を借方に記入し、現金を減らすため「現金」を貸方に記入します。
2.経費が消費されたとき
<例題>
経費の内訳が、直接経費300,000円、間接経費200,000円だった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仕掛品 | 300,000 | 経費 | 500,000 |
製造間接費 | 200,000 |
経費を消費すると、経費が減少するため、「貸方」にはその合計金額500,000円(直接経費300,000円 + 間接経費200,000円)を記入します。
次に、「借方」の部分です。
- 直接経費(300,000円) は、どの製品に使ったかを特定できるため、「仕掛品」に振り替えます。
- 間接経費(200,000円) は、どの製品に使ったかを特定できないため、「製造間接費」に振り替えます。
このように、工業簿記では経費を「直接経費」と「間接経費」に分け、それぞれ適切な勘定科目に振り替える処理を行います。特に、「振り替え」の仕訳は工業簿記でよく出てくるため、この流れをしっかり覚えておくことが重要です。
まとめ
工業簿記における「経費」とは、製品を作るための直接的なコストである「材料費」や「労務費」以外のコストです。具体的な例としては、工場の電気代や設備の減価償却費などがあります。
経費が発生した場合、直接経費は「仕掛品」に、間接経費は「製造間接費」に振り替えられます。この仕訳の流れを理解しておけば、工業簿記の経費に関する問題を自信を持って解けるようになります。