簿記2級の試験では、「リース取引」というテーマが頻出であり、しっかりと理解しておくことが求められます。しかし、リース取引には複雑な要素も多いため、最初に学ぶ際には戸惑うことがあるかもしれません。
この記事では、リース取引の基本的な概念と分類、さらにその判定方法について詳しく解説します。
リース取引の基本概念
リース取引とは、物件の所有者(貸手)が借手に物件を貸し、借手がその使用に対してリース料を支払う契約のことです。日常生活でよく耳にする「レンタル契約」に近いイメージで理解できます。借手は、リース物件を一定期間使用することができます。
リース取引に関連する主な用語は以下の通りです。
- 物件:リース物件
- 貸手(レッサー):リース物件の所有者
- 借手(レッシー):物件を借りる人
- リース期間:物件を借りる期間
- リース料:借手が貸手に支払う料金
リース取引は、DVDやCDのレンタル契約に近いイメージです。
リース取引に関わる登場人物
リース取引には、主に以下の3者が関与します。
- 売り手:リース物件をリース会社に販売する
- リース会社:売り手からリース物件を購入し、借手に貸し出す
- 借手:リース会社から物件を借りて使用する
各登場人物の目的
リース取引に関わる登場人物には異なる目的があります:
- 売り手:物件を早急に売却して資金を回収したい
- リース会社:借手からのリース料で利益を得る
- 借手:高額な物件を購入せずに必要な物件を利用したい
リース取引の本質とその仕組み
リース取引の本質は、借手がリース会社から必要な物件を「借りる」ことによって、その使用料(リース料)を支払う契約です。
もし借手がリース料を支払えない場合、リース会社は物件を売却して資金を回収しますが、物件は中古となるため、全額回収できる保証はありません。
そのため、リース会社は借手の信用審査を慎重に行います。
法的と会計的な視点から見たリース取引
法的には、リース取引は「賃貸借契約」として扱われ、物件の所有権はリース会社に残ります。しかし、会計的にはリース取引が「借手が物件を購入した」とみなされる場合もあり、これを「売買処理」と呼びます。
リース取引の分類と特徴
リース取引は大きく3つに分類されます。
所有権移転ファイナンスリース取引
この取引では、リース契約終了後に物件の所有権が借手に移転します。主な特徴は次の通りです。
- リース契約期間が物件の耐用年数の大部分(通常75%以上)に該当する
- リース契約終了時に物件の所有権が借手に移転する
- リース物件の価値がリース料総額でほぼカバーされる(物件価格の90%以上)
- 借手に非常に安い価格で物件を購入できるオプションがある(市場価値を大きく下回る)
- リース物件のリスクや報酬が借手に実質的に移転している
所有権が移転するため、会計上は「資産購入」として処理されます。
所有権移転外ファイナンスリース取引
リース契約終了後に所有権は借手に移転しませんが、リース契約が資金調達手段として機能します。主な特徴は次の通りです。
- リース契約期間が物件の耐用年数の大部分(通常75%以上)に該当する
- リース料総額が物件購入価格に近い
- リース終了後に所有権は移転しないが、借手が物件を購入する意図やオプションがある
- リース物件のリスクや報酬が借手に実質的に移転している
この取引は、所有権移転はないものの、実質的には「資産取得」として扱われます。
オペレーティング・リース取引
オペレーティング・リース取引は、リース期間が物件の耐用年数に比べて短く、またリース終了後に所有権が移転しません。主な特徴は次の通りです。
- リース契約期間が物件の耐用年数の大部分(通常75%以上)に該当しない
- リース契約終了後に所有権は借手に移転しない
- リース料総額が物件価格に比べて低い(購入価格の90%未満)
- 借手に物件を購入するオプションがなく、リース終了後に物件を返却
オペレーティング・リース取引は、会計上では「賃貸借契約」として扱い、リース料は期間ごとに費用として計上されます。
「リース取引の判定方法」の比較表
リース取引は、リース契約期間、所有権の移転、リース料総額、物件のリスクと報酬の移転を基に、以下の3種類に分類されます。
- 所有権移転ファイナンスリース取引
- 所有権移転外ファイナンスリース取引
- オペレーティング・リース取引
リース取引を分類する際の主要な判定基準は「リース契約期間」「所有権の移転」「リース料総額」「物件のリスクと報酬の移転」の4つの要素です。一方で、物件購入オプションはリース取引の特徴や契約内容に関連する補足情報として扱われ、分類の判定基準には含まれません。
下記の表は、それぞれのリース取引における判定基準と特徴を比較したものです。
判定基準 | 所有権移転ファイナンスリース取引 | 所有権移転外ファイナンスリース取引 | オペレーティング・リース取引 |
---|---|---|---|
リース契約期間 | 物件の耐用年数の大部分(75%以上)に該当 | 物件の耐用年数の大部分(75%以上)に該当 | 物件の耐用年数の大部分(75%以上)には達しない |
所有権の移転 | リース終了時に所有権が借手に移転、または移転オプションあり | 所有権は移転しない | リース終了後、所有権は借手に移転しない |
リース料総額 | 物件価格の90%以上をカバー | 物件購入価格に近い | 物件購入価格の90%未満 |
物件購入オプション | 非常に安い価格で購入できるオプションがある(市場価値を大きく下回る) | 借手に購入意図や購入オプションがある場合 | 購入オプションはなし |
リース物件のリスク・報酬 | 借手がリース物件のリスクと報酬を負う | 借手が実質的にリスクと報酬を負う | リース物件のリスクと報酬はリース会社に帰属 |
会計処理 | 資産の購入として処理 | 資金調達+物件取得として処理 | 賃貸借契約として処理し、リース料を費用計上 |
まとめ
リース取引は、貸手が物件を借手に貸し、借手がリース料を支払う契約です。法的には「賃貸借契約」として扱われますが、会計的には「借手が物件を購入した」とみなされることもあります。
リース取引には、主に所有権移転ファイナンスリース取引、所有権移転外ファイナンスリース取引、オペレーティング・リース取引の3種類があり、それぞれに異なる特徴と判定基準があります。
これらの特徴と基準をしっかり理解することで、簿記2級の試験におけるリースに関する問題に自信を持って対応できるようになります。