税務を担当する経理担当者であれば、「30万円未満の資産は全額費用化できる」ということはご存じかと思います。
少額減価償却資産は、経理処理を簡素化し、適切に活用することで節税効果も期待できます。
本記事では、少額減価償却資産の基本的な知識と、実務で押さえておくべきポイントについて解説します。
減価償却資産とは
減価償却資産は、事業に使用する建物や機械、器具備品などで、時間の経過や使用によって価値が減少する資産です。土地など、時間が経過しても価値が減少しない資産は減価償却資産には該当しません。
減価償却資産は、取得金額を使用期間にわたって費用として計上しますが、他の経費とは異なり、支出した年度に全額を費用化することはできません。
少額減価償却資産とは
少額減価償却資産は、簡単な計算で費用に計上できる減価償却資産です。取得金額や耐用年数などの細かなルールが適用される減価償却資産に対し、「少額」の減価償却資産は支出時に全額を費用化することや、3年均等償却を選択することが認められています。
なお、適用期間は令和4年4月1日から令和6年3月31日までの2年間延長されています。
少額減価償却資産の種類
少額減価償却資産には以下の3種類があります。
- 少額の減価償却資産(10万円未満または1年未満)
- 一括償却資産(20万円未満)
- 中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)
少額の減価償却資産(10万円未満または1年未満)
取得した減価償却資産が次のいずれかに該当する場合、その資産を事業の用に供した年度において全額を費用として計上することができます。
- 使用可能期間が1年未満のもの適用条件
業種において消耗品と認識され、平均的な使用方法で1年未満で使用される資産。 - 取得価額が10万円未満のもの適用条件
取得価額が10万円未満である減価償却資産。なお、ここでいう取得価額とは、通常1単位として取引される金額を指します。
一括償却資産(20万円未満)
一括償却資産は、原則的な計算方法とは異なり、取得した資産を合計して一括で償却し、3年間で均等に費用計上することができます。
- 適用条件
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産が対象となります。 - 一括償却資産のメリット
通常、ほとんどの資産の法定耐用年数は3年より長いため、一括償却資産として扱うことで、償却期間が短縮され、購入した金額を早期に費用として計上できます。また、一括償却資産は、たとえ決算月に購入して使用したのが1ヶ月のみでも、1年分を費用に計上できる点もメリットです。 - 一括償却資産のデメリット
通常の減価償却資産では、資産を廃棄した場合、未償却の簿価を全額費用処理できます。しかし、一括償却資産では、1年後に廃棄しても全額費用にはできず、除却に関係なく、3年間の均等償却を継続しなければなりません。
中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)
中小企業者等が取得した30万円未満の減価償却資産は、その年度の全額を費用として計上できます。ただし、法人税申告書に明細書を添付し、年間適用額が300万円以内であることが条件です。
適用条件
対象となるのは、資本金1億円以下の法人(中小企業者)です。大企業の子会社は対象外となります。 また、取得価額が30万円未満の減価償却資産で、1事業年度ごとの適用額が300万円以内であることが求められます。
注意点
この適用を受けるには、法人税申告書に「明細書」を添付する必要があります。さらに、手続きに関する要件もあるため、慎重に対応することが重要です。 令和4年の税制改正により、主要事業として使用しない資産や貸付け用の資産は適用対象外となるため、その点にも留意が必要です。
節税対策としての活用方法
節税を目的として、減価償却資産の取り扱いにはいくつかの工夫が可能です。経理方法や資産の取得額に応じて、適切な処理方法を選ぶことが重要です。以下では、具体的な節税対策の方法をご紹介します。
金額判定
金額判定は、経理方法によって異なります。税込経理の場合は税込金額、税抜経理の場合は税抜金額で判定します。例えば、税抜価格が299,000円の商品は、税込経理では税込328,900円となり、30万円以上となるため法定耐用年数で処理されます。一方、税抜経理の場合は、10万円未満として全額を費用計上できます。
償却方法の選択
取得価額が10万円以上20万円未満の資産については、3年均等償却を選択することで、償却資産税の対象外となり、節税効果が期待できます。たとえば、累計で100万円の償却資産税の差額が生じることもあります。
「事業の用に供する」とは
少額減価償却資産を経費に計上するためには、実際に事業活動で使用することが必要です。購入しただけでは経費化できませんので、決算前に確実に使用を開始しましょう。
まとめ
少額減価償却資産は、規定の金額や条件を満たすことで、支出した年に全額費用化できるなど、経理処理をシンプルにし、節税にもつながります。適用条件や選択肢を理解し、正しい判断を行うことが重要です。
例えば、金額判定の方法や償却方法の選択により、税務面での最適化が可能です。また、事業活動に実際に使用することで、経費計上が認められるため、決算前に使用を確実に行うことも大切です。
経理担当者として、少額減価償却資産を適切に活用することで、業務効率の向上や節税効果を高めることができます。この知識を実務に活かし、最適な経理処理を実現しましょう。